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大正ロマンを次世代へ…秋口家住宅洋館ストーリー<復元編>

2017.6.27



*秋口家住宅洋館ストーリー〈解体編〉はこちら

国登録文化財「秋口家住宅洋館」の移築に伴う解体が無事に終わったのは2014年の終わり。鈴木さんは移転先として日頃の町歩きで目に留めていた土地の所有者から程なく快諾を得ることができた。文化財の継承を自ら所有し住んで実現しょうとする鈴木さんに共感してくれたのだと言う。その間、解体から復元を請け負った地元工務店では部材を調査し補修する等の作業が行われた。膨大な数と気の遠くなるような作業を見聞きした鈴木さんは(大変ないことをしてしまった)と思ったそうだ。だがその際、外観の板張りの重ね合わさった隠れた部分に見つかった塗料から元々の色が推定できた。この洋館は大正時代の新築当時、施主が職人を神戸へ連れて行き、異人館の様式を真似て建てられたという。平成時代の施主となった鈴木さんも工務店の社長と一緒に神戸へ出向き、数々の洋館を見て歩いた。その中でも白と緑を掛け合わせた外観が多かったことが確証になった。新築当時に倣い儀式のように視察を行った2人が微笑ましい。古き良き建築物を後世に遺したい、同じ志が完成までの苦労の日々を支えることになる。

工事着工の20158月から施工期間は9ヶ月、通常の約3倍かかったことになる。一旦解体し保管したことで微妙に変形した部材を合わせては修正し合わせては修正していく作業。木材の腐食部分に小さな木材をはめ込んでいく緻密な作業など。間違いなく新しくした方が早く楽でもとことん元の部材にこだわり、仕上げていく職人たちに鈴木さんは頭が下がる思いだったという。結果、建築基準法や景観条例などをクリアしながら元の部材の9割を活用。文化財や社寺建築を専門とする地元工務店に集結された職人たちによって一見分からないところまでほぼ完全に復元されたのだ。

  

20165月、復元工事を終えた洋館は周囲の景観と違和感無く佇んだ。その場所は江戸時代の五街道の一つであった中山道と城下町を結んだ「七曲がり」と呼ばれる道の一角。敵の侵入を遅らせるために文字通り道がL字に何度も折れ曲がっているといわれている。江戸時代中期に始まった仏壇製造の職人たちが集まり住んだことから店舗や工房、当時の町家が色濃く残る。町名の名称は一部変わっているが江戸時代から変わらない町割りが残る。ご近所の顔が見えるけれど適度な距離感のあるコミュニティ。歯科医院だった2階を地域の交流場所にと構想していた鈴木さんは完成時に一般公開を行った。毎年開催されるイベント「七曲がりフェスタ」では展示会場にも。展示は今昔絵巻と題して界隈のお宅に残る昔の写真と今を見比べる写真パネルが並んだ。歳を重ねた住民の方が同じ場所、同じような服装同じポーズで撮った写真も。おちゃめな姿に日頃のご近所付き合いがうかがえる。






「当時のまま1階は住居にしましたが、水回りは一般住宅と同じように設備しました。風が吹くと窓がカタカタ鳴りますが慣れたら全く気になりません。」と話す鈴木さん。「今回の復元工事で痛感したのは、古い家を残していくということは伝統的な建築技術を継承していくことでもあるということです。需要がなければ技術は磨かれないし伝わっていきません。彦根市内では、年間500600棟の住宅が新築されています。もしも、そのうち1%が新築ではなく古民家のリフォームに変われば、年間56棟の古民家が守られ、技術の継承にもつながるのではないでしょうか。年代を重ねないと味が出ない家に価値を見出す、空家ではなく住んでこそまちのためにもなるなど、彦根のまちづくりの展望や魅力を発信し、具体的な情報を得たり相談できる「小江戸ひこね町屋情報バンク」には期待が大きいです。」

  

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記事作成:長束知香子

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