年間約200万人が訪れる観光都市、彦根。観光客の目当ては、国宝彦根城や国の名勝に指定されている玄宮楽々園であることが多いが、城下町の風景も見どころのひとつである。 戦争の影響も少なく、今でも比較的きれいに残る町並みの存在を知らない観光客も多いと今回案内していただいた「ひこね輪タク」の田中将人さんは言う。
彦根で自転車タクシーが走り始めたのは国宝・彦根城築城400年祭が開催された2007年。比較的見どころが点在している彦根の街において、自転車タクシーは気楽に利用出来る便利な乗り物だ。 彦根の伝統工芸でもある仏壇職人たちと大学、市民が共同で製作した、オリジナルの自転車タクシー’リキシャ’で、客の興味に合わせて案内してくれる観光コースを体験した。
彦根の城下町には、武士の他に魚屋、大工など様々な職業の人が住んでいた。約400年前城下町をつくる際、職種で住む区域を分けて町は整備され、「上魚屋町」「職人町」「桶屋町」など、職業にちなんだ町名をつけられた区域も多かった。住所表示変更により、現在多くが新しい町名になっているが、昔の町名をそのまま使っている町も存在する。
今回案内していただいた下魚屋町は彦根城の南側に位置し、魚屋が数十軒並んでいた町である。江戸時代の面影が残っている区域で、自転車タクシーの客にも人気があるエリアだという。
下魚屋町ではうだつの町並みが残っている。「うだつ」とは隣軒との境界に取り付けられた土壁や漆喰などで出来た防火壁であるが、経済的な余裕がある家しか設置が難しかったため、経済的豊かさを象徴するものでもあった。これが「生活や地位が向上しない」「状態が今ひとつ良くない」という意味の慣用句「うだつが上がらない」の語源のひとつだと言われている。
その中でも 江戸時代、魚の問屋業を行い魚屋町で中心的な存在であった旧広田家住宅は、約20cm幅はある立派なうだつが残っており、職人がひと手間もふた手間もかけ作った分厚い一文字瓦が美しく整列している。 田中さんにとっても旧広田家住宅はオススメスポットのひとつ。建物やうだつのどっしりとした佇まいを見たお客さまからの反応もいいと言う。
自転車タクシーで案内してもらっていると、行き止まりのように思わせる道が多いことにも気づく。城下町が作られた時に、外敵の侵入に対する防御のため、ほとんどの道を行き止まりにしたそうだ。彦根の人は行き止まりの道のことを「どんつき」と言う。「どんつき」の道以外にも、真っすぐのように見えて、微妙に曲がっている道が存在するなど、当時作られた道の面影を感じることが出来る。
格子の残る町屋や立派な蔵が残る町並みを、お客さまがリラックスして気楽に楽しめるガイドを心がけていると田中さん。そして、彦根散策の楽しい思い出のひとつになればと語ってくれた。

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情報
ひこね輪タク
観光コース:30分おひとり1500円 40分おひとり2000円
営業時間:10時~日没 火曜定休
予約電話番号:0749-29-1245
HP: http://gokan-seikatsu.jp/
email: mail@gokan-seikatsu.jp
運営:NPO法人五環生活
