top of page
高宮町 T邸 / 陶工房みかガマ

2023.3.28

 JR南彦根駅の程近く、現在の高宮は、中山道高宮宿として江戸時代、中山道第2の大きさ、本陣1軒・脇本陣2軒・旅籠総数23軒の宿場施設を持つ大宿でした。また、多賀神社への門前町として賑わい、多賀神社第一の大鳥居が建っています。特産物として室町時代から全国的に有名になっていた高宮上布の集散地として、豊かな経済力を誇っていました。

まちのシンボルともいえる大鳥居から少し北に進んだところに、かつて麻布商を営んでいた旧小堀卯之助商店はあります。明治初期に建てられたとされ、切妻平入り、1階木格子2階漆喰塗のこの地域特有のファサードに、内部は通り土間、おくどさん、五右衛門風呂、蔵が残り、当時の面影を色濃く残す建物の一つです。

 Tさんご夫妻は東京在住時、いつか地方移住して古民家に住みたいと、長らくさまざまな県の空き家バンクのサイトを見ていたそう。「いろんな地域の古い建物をたくさん見て、楽しみながらイメージを膨らませていました」と奥様のみかさん。
ご主人の転勤で勤務地が彦根に決まったことがきっかけで、本格的に物件を探し始めたとき、旧小堀卯之助商店に出会い、その佇まいや手付かずの姿にひと目で魅了されたといいます。近隣の町屋物件も含めて候補を絞り、内覧を重ねた結果、2020年に購入を決めました。

みかさんは大阪出身、東京の大学に進学して陶芸を学び始めてから制作を続け、今や百貨店やギャラリーを通じて注文が入る人気作家に。基本的に工房直売はしていないことから、利便性よりも静かに制作に打ち込めて、魅力のあるまちなみのなかで工房兼住居を構えることを求めていました。
また、ご夫婦ともにアウトドアアクティビティが趣味で、滋賀県は湖に山に遊べる場所がたくさんあり、隣県の福井に海釣りに出かけたりなどもできることから、二人にとって理想的な場所だと感じたといいます。

陶芸工房スペース 

midashi2.png

 新しい間取りは、母家にキッチン、ダイニング・リビングスペースと和室。奥の蔵を母屋とつなげ、1階にお風呂・トイレ・洗濯スペース、2階にゲストルームが配されています。
通り土間にはお二人の趣味のアウトドア道具がならび、その奥に大きな電気窯も備えた陶芸の工房スペースが。ところどころにみかさんの陶芸の作品もあしらわれており、中庭に面する大きな窓からの光で町屋ながら明るく、古さを活かしながらもお二人のセンスが散りばめられた気持ちの良い空間が広がっていました。
着工してから1年4ヶ月ほど、自分達でプランを練り、細部にもこだわってじっくりとリノベーションを進めたそうです。「長期間の工事に、近隣の方にはご不便もあるなかご協力いただいたこと、私たちの思いを形にするのに施工業者さんには粘り強くお付き合いいただき感謝しています。」と振り返ってくださいました。

通り土間

 「おくどさんも壊さず残してあるので、いずれそれを使ってイベントをしたり、陶芸のワークショップもできたら」実はまだ改修は途中で、今後も引き続き手を入れながら、やりたいことがたくさんあるそう。「自分たちの拠点が整いつつあり、隣の物件の様子も気になってきていて。高宮町が”町屋通り”のような感じで盛り上がっていけばと願っています。町屋バンクは、担当の方に見学・契約、その後も長らく尽力してもらい感謝しています。都市部には自分たちのように地方の古い建物に興味を持っている人がたくさんいると思うので今後も情報発信を続けてほしい。」と語ってくれました。古きよきものを未来につなげる、Tさんの想いがまちに新しい風を吹き込んでくれそうです。

1.jpg

おくどさん、まだまだ現役

information

工房:陶工房みかガマ

【店舗なし 工房のみ】

HP:

bottom of page